あるOBの呟き- ファイナルステージ vs LIXILディアーズ戦

2014/12/02

2ndステージの対戦で、アサヒ飲料チャレンジャーズ、LIXILディアーズ(以下、LIXIL)を破り、自らの手で2回目のファイナルステージ進出を掴んだBigBlue。しかし皮肉なことに、そのファイナルステージの対戦相手は二週間前に対戦したばかりのLIXILとの再戦です。2ndステージの試合の結果次第ではこうなることは予想されていただけに、相手は余裕を持って戦ってきており前回勝利しているとは言え今回はさらに厳しい試合が予想されます。

前回の試合では、LIXIL QBの加藤選手が、BigBlue QBクラフト選手を上回る286ヤードのパッシング記録を上げながらも、獲得したTDは1つだけとオフェンスシステムが効率よく機能していませんでした。その理由の1つは、今日の試合のために温存したプレーがあったことは十分想定されます。長いパスは余り投げず、ショート、ミドルのパスを中心にシリーズを組み立ててきましたが、今回は要所でロングパスも組み入れてくるはずです。その分、相手の攻撃力は前回よりもアップしているはずですから、この試合はディフェンスがいかに相手の攻撃を防ぎきるかが、どちらのチームにとっても勝利に必要な条件と言えるでしょう。

第一試合では、富士通フロンティアーズが五連覇を狙うオービックシーガルズの反撃を最後に断ち切り27-17で勝利。この富士通とJapan X Bowlで対戦するのはどちらのチームになるのか、期待と不安を乗せてLIXILのキックオフでいよいよ試合が始まります。
 

冴えるオフェンス、追うLIXIL

リターナーに入ったWR#81栗原選手が29ヤードを戻し、自陣39ヤードからBigBlueの1stダウン。WR#83松尾選手に背面キャッチの23ヤードパスが通ると、続いてRB#10末吉選手へ2回続けてパスが成功しあっと言う間にゴール前7ヤードでファーストダウンを奪います。その末吉選手がまずは中央を突進して3ヤード進むと、2ndダウンではWR#17小川選手へ先制のTDパスが成功。試合開始1分34秒、わずか5プレーでの先制TDです。

続くLIXILの攻撃は、ランプレーでダウン更新は許すものの、DB#1中谷選手がインターセプト。ディフェンスも流れを掴みます。TE#40スタントン選手へのパスで敵陣に入ると、WR#16梶川選手へサイドライン際のパスでダウンを更新。WR#81栗原選手へのパスを挟み、RB#21髙木選手のラッシュでダウンを更新すると、TE#40スタントン選手への13ヤードTDパスでこのシリーズを締めくくります。続くLIXILの攻撃では、WR#11前田選手へのパスでダウンを更新するものの、4thダウン2ヤードからのギャンブルでWR#2中川選手へのパス。パスをキャッチするものの、DB#20矢部選手とDB#9中島選手のハードタックルでボールを零すと、LB#7岸本選手が拾い上げて33ヤード戻します。敵陣37ヤードからのファーストダウンを獲得したBigBlueは、QB#3クラフト選手からWR#81栗原選手へ37ヤードのTDパスを一発で決め、21-0とLIXILを圧倒します。

しかしLIXILもすかさず反撃。WR#11前田選手へロングパスが成功し一気にゴール前4ヤードまでボールを進めると、WR#2中川選手へ4ヤードのTDパスが成功します。さらにLIXILは、続くBigBlueのオフェンスで、TE#40スタントン選手のランアフターキャッチをハードタックルでボールをファンブルさせリカバー。再びエンドゾーンを狙いますが、BigBlueディフェンスの厳しいタックルにパントで攻守交代し、2Qに入ります。

LIXILのパントは、ゴール前6ヤードで止まり、エンドゾーンを背負った厳しい状況からBigBlueのシリーズが始まります。まずは陣地を回復したいBigBlueですが、LIXILのラッシュも厳しく4thダウンパントとなります。このパントが短く、LIXILはBigBlue陣内37ヤードからのファーストダウンを獲得します。WR#11前田選手へのパスでダウンを更新したLIXILですが、DB#6北守選手のロスタックルに、DL#2河合選手のQBサックで、3rdダウン15ヤード、ゴール前20ヤードとします。しかし、QB#9加藤選手は冷静に左コーナーへ走るWR#85鈴木選手へTDパスが成功。21-14と1TD差に詰め寄られます。

2Q最初のBigBlueのオフェンスシリーズ。QB#3クラフト選手は、右サイドからフラットに走り込んできたWR#81栗原選手へパスを通します。WR#81栗原選手は、そのまま左サイドに抜けると、リードブロッカーを生かして26ヤードのロングゲインを獲得します。QB#3クラフト選手のスクランブルの後、TE#40スタントン選手、RB#10末吉選手とダウンを更新するパスを通して、ボールは敵陣32ヤードでファーストダウンを獲得します。その勢いそのままに、WR#17小川選手は肩越しにとんできたパスをエンドゾーンでキャッチ。32ヤードのTDパスとなり、28-14と再びリードを広げます。

続くLIXILの攻撃は、1st/2ndダウンとパス失敗。3rdダウンコンバージョンとなり、再びポストパターンのロングパスを狙いますが、これを狙い澄ましていたDB#1中谷選手が、この試合2本目のインターセプトで断ち切ります。ここからのBigBlueの攻撃は、WR#17小川選手へ続けてパスが成功し一気にゴール前11ヤードまで攻め込むと、3rdダウン残り6ヤードから右サイドからエンドゾーンへ走り込んだWR#81栗原選手へパス。これをジャンプキャッチし、栗原選手はこの試合2本目のTDレシーブとなります。

LIXILも直後のキックオフをBigBlue陣内まで大きく戻しますが、続くプレーが止められて4thダウン6ヤード。ここからギャンブルを選択したQB#9加藤選手はWR#18永川選手へ39ヤードのTDパスを成功させ、追いかけます。35-21とまだ点差はあるものの、あっと言う間に失点を許してしまったBigBlue。しかし直後の攻撃では、RB#10末吉選手、WR#80瀧選手と続けて20ヤード近いパスが成功して敵陣に進むと、今度はRB#10末吉選手が相手のタックルをかいくぐり22ヤードのビッグゲインでゴール前10ヤードまでボールを運びます。ここからRB#21髙木選手のランの後、QB#3クラフト選手がパスからスクランブルでエンドゾーンを狙いますが、僅かに届かず、ゴール前1ヤードでファーストダウンとなります。残り1ヤードから1stダウンのプレーは、RB#21髙木選手にハンドオフフェイクを入れた後、逆サイドにいたTE#91村上選手へのプレーアクションパスが成功。オールジャパンでCを努めた事もある村上選手を、今シーズンはOLのブロック力強化のためにTEにコンバートしていますが、ついに念願のTDレシーブをする事出来ました。

42-21と点差は3TD差のダブルスコアに広がり、ややホッとした空気が漂う中、しかしLIXILは粘りを見せます。自陣39ヤードからの攻撃は、BigBlueのマンツーマンパスカバーの隙をつき、続けてパスが成功し、ゴール前2ヤードでファーストダウンを獲得します。1stダウンのRB#29丸田選手のダイブは、LB#97國方選手が1ヤードで止めます。2ndダウン1ヤードからのQBドローは、DE#5トゥファーガ選手が3ヤードのロスタックル。3rdダウン4ヤードからは、RB#29丸田選手へスイングパスが投じられますが、これをLB#7岸本選手がシューストリングタックルでさらに4ヤードのロス。4thダウン8ヤードとなりますが、LIXILはFGでなくTDを狙います。時計を残り5秒まで進め、さらに残りタイムアウトを続けて取り、じらしにじらしたところで、右コーナー角にQB#9加藤選手からWR#7宮本選手にTDパスが成功。PATのキックと共に、42-28と相手の追撃を許したところで前半が終了します。
 

見せるLIXILの底力

BigBlueは6TDパス、LIXILも4TDパスと派手な空中戦となった前半。後半はLIXILのオフェンスシリーズから始まりますが、この前半の流れを生かして、続けてパスが成功。ゴール前11ヤードでファーストダウン獲得となります。相手のパス攻撃を押さえ、3rdダウン9ヤードでは、DE#34ブルックス選手の激しいQBサックに大きく後退し、4thダウン17ヤードとなります。これでギャンブルも厳しくなり、LIXILはK#14青木選手が35ヤードのFGを成功させます。

詰め寄られたらすかさず離したいBigBlue。自陣27ヤードからのQB#3クラフト選手のパスをキャッチしたWR#18上廣選手は、LIXIL DBの間を70ヤード独走し、あわやTDというゴール前3ヤードまでボールを運びます。しかしここからのLIXILのディフェンスは厚く、QB#3クラフト選手がサックを受けて3ヤード下がると、3rdダウンでのWR#16梶川選手へのパスは僅かにゴールラインに届きません。4thダウン1ヤードからTDを狙ったWR#83松尾選手へのパスは、LIXIL DB#24佐野選手が右手で弾き失敗。得点に繋がりません。替わって、ゴール前1ヤードからのシリーズとなるLIXILは、WR#85鈴木選手へのパスでダウンを更新しますが、そこからのランプレーを、DL#2河合選手、DE#5トゥファーガ選手がタックルし、4thダウン6ヤードとなります。自陣21ヤードとボールポジションが悪いため、LIXILはパントで陣地を回復し攻守交代となります。

次のオフェンスシリーズでは、1stダウンのプレーでターゲットが見つからないQB#3クラフト選手がタイミング良くスクランブルにでます。これが逆に功を奏し、一気に敵陣43ヤードまで前進します。さらにWR#16梶川選手への12ヤードパスでダウンを更新。RB#21髙木選手のランの後、続けて今度は髙木選手へパスが通りゴール前20ヤードでファーストダウンを獲得します。1stダウンでは、再びRB#21髙木選手へのパスが成功。そのままエンドゾーンへ飛び込み後半最初のTDを奪い、49-31と再び2TD以上が必要な点差に広げます。

しかし後半に入りリズムを掴んできたLIXILは、続く攻撃シリーズで4thダウン1ヤードをQB#9加藤選手自らのランで更新すると、ここから得意のパスオフェンスが続けてヒット。ゴール前5ヤードでファーストダウンを獲得し、さらにRB#20岩倉が2ヤード進めたところで、試合はいよいよ最終4Qに入ります。ここでQB#9加藤選手は、正面に走り込んできたWR#7宮本選手へTDパスをヒット。PATキックも成功し、49-38と射程圏内に迫ってきます。

すぐさま反撃に出たいBigBlueオフェンスですが、TE#40スタントン選手へパスは通るものの、4thダウン1ヤードでパント。再びチャンスを掴んだLIXILですが、ミドルゾーンを狙ったパスを、DB#22中山選手がインターセプト! すぐさま攻撃権を奪い返します。敵陣43ヤードからのBigBlueの1stダウンの攻撃。QB#3クラフト選手は、一旦左側にパスフェイクのアクションを入れると、反対側右サイドラインを走るWR#81栗原選手へパスを投じます。そのパスをジャンプしてキャッチすると、そのまま相手DBともつれながらもエンドゾーンへ倒れ込み、1プレーで再びTDを奪います。

なんとか追いつきたいLIXILは、BigBlue陣内に入ったところで、DL#99紀平選手がQBサック。これでリズムが狂ったのか、続けざまにパスを失敗し、4thダウン12ヤードからのギャンブルではDB#1中谷選手が、この試合三つ目のインターセプトを奪います。

再び得たチャンスに、まずはこの試合好調なRB#21髙木選手が、中央を真っ直ぐに駆け上がる29ヤードランで大きく前進します。さらにRB#10末吉選手へのショートパスは、そのまま相手ディフェンダーを倒しながら進み、ゴール前19ヤードまで一気に30ヤード前進します。ここからは今日のホットラインWR#81栗原選手へTDパスが一回で成功。栗原選手はこの試合4TDキャッチとなり、点差も3TD以上が必要な62-38と大きく開きます。

しかし、ここからLIXILの反撃が始まります。続くキックオフリターンでWR#18永川選手は一気にレッドゾーン近く迄戻し、さらにBigBlueのフォースカラータックルの反則でゴール前13ヤードでファーストダウンを獲得します。ここからWR#11前田選手へTDパスが成功すると、さらに2ポイントコンバージョンも成功。わずか3プレーで8点を追加します。続くキックオフではオンサイドキックを成功させ、再び攻撃権を得たLIXILは、ここでもWR#34藤森選手へ34ヤードパスが成功しゴール前13ヤードへ進むと、今度はWR#7宮本選手へTDパスが成功。わずか2プレーでTDを奪い、さらにこの場面でも2点コンバージョンを成功させ、4Q 6分余り残してとうとう得点は62-54と逆転も可能な範囲に詰め寄られます。

続くLIXILのキックはアウトオブバウンズとなり、やや救われた感じからのBigBlueのオフェンス。QB#3クラフト選手は落ち着いて、まずはTE#40スタントン選手へパスを通します。このパス、スタントン選手とLIXIL DB#13山本選手と取り合いとなりましたが、同時キャッチの判定でパス成功。26ヤード前進します。さらにWR#17小川選手、WR#81栗原選手と、クラフト選手のパスは確実にヒットし、ゴール前15ヤードでファーストダウンを獲得します。ここから、OLが開けた中央の穴を、ハンドオフされたRB#10末吉選手が真っ直ぐ駆け上がると、タックルを受けながらもエンドゾーンに飛び込み、この試合両チーム合わせて17本目のTDは、この試合初めてのランプレーでのTDとなります。

得点は69-54と再び2TD以上が必要な点差に広がりますが、試合時間はまだ3分余り残っています。まずは早い時間でTDが欲しいLIXILは、QBスクランブルとWR#85鈴木選手へのパスでゴール前23ヤードまで前進します。1stダウンのパスは、DE#34ブルックス選手がチップして失敗。2ndダウンではRB#29丸田選手へのパスをLB#97國方選手が2ヤードでタックル。3rdダウンでは、ターゲットが見つからずスクランブルにでるQB#9加藤選手を、DL#99紀平選手が5ヤードのロスタックル。4thダウン13ヤードからのギャンブルは、TDを狙ってWR#85鈴木選手へ投じたパスを、横から走り込んだDB#1中谷選手がカット! 追加点を許さずに攻撃権を奪い返し、ほぼ勝利を手中に収めます。

残り2分3秒からのBigBlueの攻撃は、ランプレーでタイムコントロールに入ります。LIXILも残り1回のタイムアウトで時計を止めますが、続くプレーでは目一杯時間を消費。4thダウンのパントでは、WR#89円谷選手がキャッチと同時にリターナーをタックルし、相手に反撃の糸口を与えずに12秒を残してLIXILに攻撃権が移動します。1stダウンで最後の望みを託してQB#9加藤選手が投げたパスは、しかしDB#6北守選手がインターセプト。最後に3秒が残り、これはQB#3クラフト選手がニーダウンをして試合終了となりました。
 

チャレンジャー精神を胸に秘めて

1Qに立て続けに3TDを獲得した時には、正直なところこの試合はどうなるのかと思いましたが、やはり強豪LIXILディアーズは簡単には勝たせてくれません。特に4Q中盤から、まるでシナリオが準備されていたかのようにTDを奪い2点コンバージョンを成功させ、さらにオンサイドキックを成功させて再びTD+2点を奪った二つのオフェンスシリーズは、両方合わせても1分7秒という、文字通り秒速の早業で奪われた得点でした。こういう状況でも、これだけのプレーを実行できる自力の強さは、やはりこれまでの経験と集中力の強さだと感じます。正直なところ、逆の立場であればまだまだBigBlueには届かないレベルであったかと思います。しかし、そんな状況であっても、最後にもう一つRB#10末吉選手のTDを奪う事が出来るだけのしぶとさも今のBigBlueにはあるわけで、ここが昨年までのBigBlueからの成長点であり、大きな違いと言って良いでしょう。

この試合、両チームのオフェンスが爆発し、クラフト選手はパスで676ヤードを獲得。パス成功率も80%近くに達しています。一方でLIXILの加藤選手も519ヤードを獲得。しかし成功率は67%とやや低く、要所で決めきれなかった印象があります。また、ランプレーではBigBlueが25回で109ヤード獲得したのに対して、LIXILは21回で18ヤードと、ランディフェンスではBigBlueが圧勝しました。この試合では両チーム合わせて17TDが生まれましたが、最後の末吉選手のTD以外は全てパスによるもの。この点に関しては、RB以上にBigBlueのOL陣を称えるべきでしょう。

二度目の挑戦でファイナルステージを勝ち抜き、チームとしては初めてJapan X Bowl、社会人チャンピオンの決勝戦と言う晴れ舞台に進む事が出来たIBM BigBlue。しかし対戦相手は、1stステージで13-41と大敗している富士通フロンティアーズです。BigBlueの試合に先立ち開催された、富士通 vs オービックの試合でも、最後まで諦めない強さと実力を十分に発揮した内容で、正直なところどこを攻めれば勝機を見いだせるのか厳しい状態です。しかし、苦しみながらもLIXILに連戦連勝したこの経験は、きっと次の試合にも生きるはずです。すでに5回目のJapan X Bowl出場となる富士通にとっては、今回こそ優勝を勝ち取るために、これまで以上の力でぶつかってくるでしょう。BigBlueにも、ここまでチーム一体となって勝ち上がってきた自信と誇りがあります。まだまだBigBlueのフットボールシーズンが続く事を信じています。Go BigBlue!

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