Japan X Bowl XXVIII: 富士通フロンティアーズ戦の見所
2014/12/08
LIXILディアーズ(以下、LIXIL)との連戦を勝ち抜き、チーム史上初めてJapan X Bowlに進むIBM BigBlue。対戦相手は、ここまで無敗で勝ち上がり、しかもBigBlueが1stステージで敗れている富士通フロンティアーズ(以下、富士通)です。富士通とは、今シーズンも含めてこれまでリーグ戦で4回対戦し、一度も勝ち星が無いチーム。それでも、過去3試合の失点は何れも24点であったため、オフェンス力の整った今シーズンは満を持しての挑戦でした。結果は予想を大きく上回る41失点を許してしまい、13-41と言う大差での敗戦となりました。このままズルズル2ndステージの試合を落とす恐れもありましたが、2ndステージでの対戦までに時間があったこともあり、なんとかチームを立て直して2ndステージを勝ち抜き、さらにLIXILとの再戦となったファイナルステージでのオフェンス戦も勝ち抜いてきました。
Japan X Bowl初出場となるBigBlueと事なり、富士通はTokyo Super Bowl時代も含めて昨年に続き6度目の出場となりますが、これまでの優勝経験は無し。特に過去5試合のうち4試合は1TD差で敗れているだけに、今シーズンに賭ける意気込みの高さはこれまで以上と予想されます。その意気込みはファイナルステージで現れ、今年5連覇を狙うオービックとの激しい競り合いを最後に突き放し27-17で勝利。Japan X Bowlへ2年連続で進出しました。その原動力となったのは、ルイジアナ工科大学で活躍したQB#3キャメロン選手。特にWR#81中村選手とのホットラインは他チームを圧倒する成績を残し、今シーズン躍進の原動力になっています。同じくリーグトップのパッシング力を誇るBigBlue QBクラフト選手との投げ合いに注目が集まります。
オフェンスの見所
ここまで昨年以上のオフェンス力を発揮しているBigBlue。1stステージの富士通戦、ノジマ相模原戦、さらに2ndステージ以降の3試合、合計5試合の成績を見ると、パス成功率は67%と決して悪くはありません。雨の中の試合となったアサヒ飲料戦での成功率が47%であったことを考えると、まずまずの成績と言えます。実は、同様にして富士通キャメロン選手の成功率も68%とほぼ同じ。富士通の場合、ノジマ相模原戦で苦しみ、この時の成功率は54%と他の試合で70%以上と差があり、それが理由になっています。ただ全体として富士通の記録が有利なことも確かで、BigBlueが優るのは1試合平均のパス獲得距離(BigBlue: 341.2 yards vs 富士通: 297.8 yards)だけです。ここから推測できるのは、富士通オフェンスの方が、必要な時に必要なパスが成功する「決定率」が高いということです。
BigBlueの2回のLIXIL戦を見てみると、2ndステージでは5つのTDを得るために合計41プレーを消費し、1TDあたり8.2プレーを要しています。ファイナルステージでは、10TDを53プレーで獲得しており、1TDあたり5.3プレーと効率的な得点経過に改善しています。LIXILは最初の対戦でQBクラフト選手のパスオフェンスに苦しめられ、その対策を準備してきたと思われる中での改善だけに、これはBigBlueオフェンスが好調な証拠と考えたいところです。その改善理由として考えられるのは、2ポイントから一件無作為にラッシュしてオフェンスのブロックを攪乱する鹿島ディフェンスに、BigBlueのOL陣が良く対応した事でしょう。一度富士通戦で相手のDL/LBのラッシュを経験しているだけに、今回はOL陣も十分に対策して対応すると考えられます。ファイナルステージではQBクラフト選手のスクランブルやドローが効果的でしたが、それもパスプレーの効果があってこその結果です。オフェンスコーディネーターを兼ねるクラフト選手が、今回はどの様なゲームプランを用意してくるかは分かりませんが、いずれにしてもパス攻撃を中心に組み立てられることは確かです。序盤でのBigBlueのオフェンスシリーズがどの様に動くかが、先ずはこの試合での見所の一つです。
両チーム共に優秀なレシーバーが揃っており、特に富士通のWR#81中村選手の力は頭一つ抜きん出ていることは確か。同じ#81を背負うWR#81栗原選手が前回以上に好調なキャッチを見せてくれるかが、勝利のためには必須です。しかし、WR#81栗原選手、WR#17小川選手、TE#40スタントン選手というBigBlueのレシーバー三本柱に対してのマークはこれまで以上に厳しくなることは確かで有り、彼らに続くレシーバー陣、特にWR#83松尾選手、WR#16梶川選手と言ったベテラン陣に、前回も活躍したRB#10末吉選手やRB#21髙木選手へのパスを、どの様に効果的に利用するかが、この試合の見所で有り勝負の要になるでしょう。
両チームの空中戦が注目されるこの試合ですが、やはりグランドアタック能力は重要。今シーズンはベテランのRB#10末吉選手とルーキーRB#21髙木選手が、それぞれの持ち味を生かした走りで活躍しており、彼らのプレーは注目点で有り見所でもあります。富士通にも後藤選手、ゴードン選手、高野橋選手と富士通オフェンスを支えるランナーがおり、両チームの地上戦も重要な見所です。ランナーの場合、ヤードを獲得することも重要ですが、相手タックラーに当たり勝ちする「強さ」を見せることは、相手ディフェンスの意欲を削ぐ需要な要素でもあります。勿論、ヤードを獲得し、ダウンを更新しなくては意味がありませんが、その上で相手に勝つ走りを見せてくれるかどうかが、RB陣の見所です。
ディフェンスの見所
試合に勝ったとは言え、54失点と言う記録は、2010年の2ndステージでの対オービック戦と、2013年の2ndステージでの対パナソニック戦での55失点に次ぐワースト2の失点記録です。前回のLIXIL戦は両チーム合わせて123得点というXリーグ新記録になりましたが、ディフェンスとしては決して満足できる内容では無かったことでしょう。特に問題なのは、2Q最後に4thダウン8ヤードからのギャンブルを成功させてしまった事と、4Q中盤に立て続けにTDと2点コンバージョンを許してしまったことです。2Q最後のTDは、あれを守り切れば前半でほぼ勝負が確定したと言って良く、あのプレーが成功したが故にLIXILの後半の粘りが生まれたとも言えます。また後半のTDも、24点差と時間帯を考えればほぼ安全圏内と言って良い差に開きながらも、最悪のシナリオを2回も許してしまい、もしLIXIL最後のTDの後のキックオフが失敗(アウトオブバウンズ)にならなければ、正直なところ試合の結果は違っていたかもしれません。
前半リードしながら途中から苦しむ結果になった原因は、相手のパスオフェンスへの対応がまだまだ不十分だったこと。2ndステージではほぼ防いできたことから油断したとは思いませんが、マンツーマンの裏をかかれたり、QBにラッシュはするものの圧力にはならずターゲットを探して投げる余裕は合ったように感じられます。パスディフェンスとしては、まずはDBとレシーバーのマッチアップをどれだけ優位に進めるかも重要ですが、一番重要なのはQBに楽に投げさせないこと。LIXILのQB加藤選手も機動性のあるQBでしたが、今回のキャメロン選手はさらに機動力も有り、またパスポケットから出てからもエンドゾーンを狙える力と能力を持ったQBです。前回は両エンドのDE#34ブルックス選手とDE#5トゥファーズ選手が確実にブロックされ、OLが足りなくなった分はQBキャメロン選手の能力でBigBlueディフェンスのラッシュを回避していました。今回、DL/LB陣がどれだけ前回の反省を生かしてQBキャメロン選手に攻め込めるかが、この試合最大の見所で有り、勝利のための必須条件でもあります。今シーズンのBigBlueディフェンスの長所は、両サイドのDEが相手を引きつけてくれる分、DL#2河合選手、#31藤井選手、#99紀平選手が中央を堅守し、さらにその後ろにLB陣、そして今シーズン大活躍のSS#1中谷選手のバックアップという、文字通り二重三重の厚い守備ラインが構築されていることです。前回の対戦ではキャメロン選手の動きに翻弄されていた、特にLB陣がどれだけ対応出来るかがこの試合の鍵となるでしょう。
それが期待出来る理由は、前回の試合でLIXILのランプレーを18ヤード(21回)に押さえたことです。最初から点の取り合いとなり、パス中心の展開となったこの試合。当然ディフェンスとしてもまずはパスプレーに注意が向くと思いますが、そんな中でも確実に相手のランプレーを止めたことが、乱打戦の中で相手に打ち勝った理由の一つです。富士通の場合、キャメロン選手のランにも注意がひつようなため、前回以上に厳しいディフェンス戦となることが予想されますが、相手の選択肢をどれだけ潰せるかもは重要な要素。ここまで、平均160ヤードを獲得してきた富士通のグランドアタックをどれだけ止められるかがこの試合の勝因となります。
試合の見所
初めてのJapan X Bowl出場のBigBlueに対して、富士通は昨年に続き今回が6回目の出場となります。例年2万人近い観客が東京ドームに集まり、通常の東京ドームでの試合とはかなり雰囲気も違いますし、実際会場内の熱気はプレーにも影響するほどです。地の利と言う意味では、昨年の試合を経験しているメンバーが殆どそのまま残っている富士通が有利ですが、6度目の挑戦という事が逆にプレッシャーになる可能性も高いと考えられます。記録的な要素では、正直なところ富士通がリードしていることは事実です。また、BigBlueのクラフト選手が、3年目にしてやっと完成しつつあるオフェンスシステムを、キャメロン選手は1年目にして完成させつつあります。これは、それぞれのQB本人の能力もさることながら、パスを受けるレシーバー、QBを守るOLと言った選手層の差であることも事実でしょう。BigBlueとしては、過去3シーズン苦しみながらも作り上げてきた「経験値」をどれだけこの試合で生かせるかが、富士通のシステムに優る点と言えます。また、オフェンスコーディネーター兼任のクラフト選手としては、前回の富士通戦用に準備したゲームプランにどの様な修正、改善策を加えてこの試合を勝ち抜くのか、その展開が大いに注目されます。
一方のBigBlueディフェンスは、やはり失点をどの様に防ぐのかという事に絞られます。そこで参考にすべきは、富士通オフェンスが一番苦しめられた1stステージ最終戦、ノジマ相模原ライズ戦です。この試合のノジマ相模原ディフェンスは、最初のターンオーバーからの富士通最初のオフェンスシリーズでTDを許すものの、その後は無失点で試合を終了しました。この試合のノジマ相模原ディフェンスは、まずは富士通のランプレーを止め、DEがキャメロン選手プレッシャーを与えてパスのタイミングを狂わせたことが勝因の一つと言えます。ディフェンスの所にも書いたように、まさに今BigBlueディフェンスがやろうとしていることを実行できれば、前回の雪辱は十分可能なわけで、これまでとは異なる雰囲気・条件のこの試合でどれだけ自分達のプレーが出来るかが、結局は一番重要になります。怖いもの知らずのチャレンジャーが、その勢いそのままに勝ち上がるか、これまでの経験値を生かしたベテランチームが悲願の初優勝を勝ち取るか、どちらのチームに取っても負けられない試合になることは確かです。Go BigBlue!
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