あるOBの呟き(番外編) - 第5回IFAFシニア世界選手権観戦記(2)

2015/07/16

アメリカンフットボール(Pro Football)の「名誉の殿堂(Hale of Fame)があり、フットボールの聖地としてフットボール好きには知られている、米国オハイオ州カントンで開催されている、第五回IFAFシニア世界選手権大会。五大会連続出場をしている日本は第一回第二回大会で優勝したものの、米国やカナダという強豪国が参加し始めた第三回大会以降は、2位(アメリカとタイブレークで敗れる)、3位(準決勝でカナダに敗れて三位決定戦でメキシコに競り勝つ)と順位を落としてきています。今大会では、直前にカナダが出場辞退をしましたが、メキシコを初め他の参加国の実力も上がってきており、なんと言っても米国チームは地元開催という事もあり、これまでより入念な準備をしてきています。

三日前に米国に敗れた日本は、この試合メキシコ戦で敗れると、三位決定戦へ進むことになります。米国は日本の試合の後フランスと対戦が予定されていますが、実力的に大きな開きがあるため米国の優位は動かないと思われます。ならば、メキシコを破り二大会振りの決勝進出を勝ち取り、米国と再選を果たしたいところです。試合会場のカントンは、前日は雷雨が何度も発生したり不安定な天候でしたが、日本の試合が始まる頃には青空も見え、気温もぐんぐん上がってくる状態です。休養十分のメキシコに、米国戦直後の日本との体力勝負とも言える条件になってきました。
 

栗原選手が先制の2TD

メキシコのキックオフで試合開始。リターナーに入ったWR#18木下選手が大きく戻しますが、ここでボールをファンブル。一瞬ターンオーバーかと思われましたが、何とかリカバーし事なきを得ます。この試合先発QBはQB#8高田選手。自陣25ヤードからの攻撃は、まずWR#81栗原選手へ4ヤードパス、続けてWR#18木下選手へ1ヤードパスで3rdダウン5ヤード。QB#8高田選手は、フック気味の短いパスをWR#81栗原選手へ通すと、栗原選手はタックルを受け一瞬片手をグランドに付きますが、そこから自慢の脚力でスピードアップをして体勢を立て直すと、相手DBを置き去りにして70ヤードを独走。あっと言う間に先制のTDを奪います。

幸先の良いスタートを切った日本はディフェンスがメキシコの攻撃を4thダウンパントに押さえて再び日本の攻撃に。しかしここで15ヤードの反則もあり最初のシリーズのリズムが生かされません。逆にメキシコはパスが効果的に成功し、一度は1stダウンの反則で1stダウン20ヤードになりますが、4thダウン2ヤードまで盛り返すと4thダウンギャンブルも成功。しかし次のプレーで相手のファンブルを日本がリカバーし攻撃権を奪い返します。

この試合パスが好調なQB#8高田選手は、パスで前進するものの、RBの#21髙木選手や#29李選手のランは思うように前進出来ません。しかし、相手の反則にも助けられて、ゴール前12ヤードで1st Downを獲得するとRB#6神山選手の2ヤード前進の後、エンドゾーンに滑り込むように走り込んだWR#81栗原選手へ再び10ヤードのTDパスが成功。14-0とさらに点差を広げます。

米国戦の時とは全く勢いが違うこの日の日本オフェンス。しかし1Q最後に4th Downパントで相手から攻撃権を奪うものの、パントリターン時の反則で攻撃は自陣の5ヤードからと厳しい状況。ここから2プレーを消費したところで1Qが終了します。2Qに続く日本のオフェンスですが、シチュエーションの悪さからパントで陣地を回復するのがやっとの状態。しかしメキシコもダウン更新はするものの日本の厚い守りを崩すことは出来ず、暫く相互にパントで攻撃権が移動するシリーズが続きます。

試合が再び動いたのは、2Qも後半に入ってから。相手のタッチバックで自陣20ヤードからの日本の攻撃。QB#8高田選手は、このシリーズではWR#11前田選手へボールを集めロングゲインを獲得し、ゴール前22ヤードで1st Downを獲得します。1st DownではWR#11前田選手へのパスが失敗しますが、2nd Downでは唯一の大学生メンバーRB#29李選手が5ヤード前進。ここで3rd Downコンバージョンでは、再びWR#11前田選手へ今度はパスを通します。ゴール前の密集で一瞬体が止められたように見えましたが、それが幸いしてか大きく浮いたからだはそのままエンドゾーンに倒れ込み、この試合3本目のTDとなります。これで21-0とさらに点差が広がります。

続くキックオフでは、大学生選手のRB#29李選手がリターナーをボールキャッチと同時にタックルし、自陣11ヤードからの攻撃という不利な状況を相手に強います。しかしメキシコも諦めません。ここに来てメキシコのランプレーを日本のディフェンスが止められず、じりじりと前進を許してしまいます。ただ残り時間がどんどん減っていく中プレーも荒くなり、それまでは安定していたパスも不成功が続き、結局自陣から出ること無く2Qが終了。21-0の日本のリードで後半へ続きます。
 

守備に課題か、失点を許す

3Qは日本のキックオフで試合再開。K#26佐伯選手のボールはエンドゾーンまで届き、戻し始めたリターナーも日本の早い潰しでゴール前14ヤードで止められます。結局メキシコは自らの反則も有りダウンを更新出来ずにパントとなり、敵陣48ヤードから日本の後半最初の攻撃が始まります。後半もQB#8高田選手が登場。この試合好調なパスが続けて成功し、ゴール前16ヤードでファーストダウンを獲得します。しかしここからは逆にパスが通らなくなり、4thダウン残り8ヤードから、31ヤードのFGを狙います。距離的には全く問題無い距離のはずですが、何かサイン違いがあったのか一寸ドタバタした感じでプレーが始まり、それが理由なのかボールはポストを外れて失敗となってしまいます。

これが逆にメキシコの気持ちを切り替えさせたのか、攻撃シリーズにリズムが生まれ、ランとパスが噛み合いながら前進を始めます。一度は反則で10ヤード後退しながら、その直後のプレーで一気に30ヤード前進し、最後は10ヤードのTDパスが成功。21-7と相手に反撃の切っ掛けを与えてしまいます。

日本のオフェンスは前半の勢いをまだ取り戻せていませんが、その分パンターも兼ねるK/P#24佐伯選手の絶妙なパントはゴール前10ヤードで外に出て厳しい条件を相手に与えます。この状況で有効なプレーが見つからない焦りからか、QBが奥に狙って投げたパスをDB#16三宅選手がインターセプト。再び日本の勢いが戻りつつあります。しかし直後の日本の攻撃はターゲットが見つからないQB#8高田選手がサックされ大きく後退。ここで3Qが終わり、いよいよ試合は最終4Qに入ります。

4Qに入ってからは、プレーの中心をランプレーに設定し、RB#21髙木選手と#29李選手がボールを前に運んでいきます。#29李選手の突進と相手の反則も重なり、ボールはゴール前6ヤードで1st Down。再びRB#29李選手が突破するものの、ゴール前ショートで止められてしまいます。続いてRB#21髙木選手が一度飛び込みますが、これも止められてしまいます。さらに続けて2回めの突進は、密集したスクリメージラインの僅かな隙間を髙木選手が潜り込みますが、直ぐに体が戻されたように見えました。審判の最初の判定はニーダウンでしたが、ここでビデオ判定で確認が入ります。今回の大会は、全試合をアメリカのケーブルテレビ局ESPN3が中継するため、ビデオリプレーが即座に可能になっています。スタジアムのビデオに映されたシーンでは確実にラインを超えているように見えます。結果、判定は変更されてRB#21髙木選手のTDが確定しました。

何とか先ずはTDを一つ取り返したいメキシコ。しかし、ここに来て疲れが出始めたのかプレーが荒くなり反則も重なります。そんな状態でチャレンジした4th down残り16ヤードからのギャンブル。当然ロングパスを予想していた日本のDB陣は、LB#17天谷選手がレシーバーの前に入りジャンプしてインターセプト。このまま一気に突き放したい日本でしたが、ここでベンチは隠れQBとも言われているWR#19永川選手をQBとして投入。自らQBキープで5ヤード前進しますが、4th down 1ヤードが残りパント。3分弱の時間を残して、またメキシコの攻撃が始まります。

最初のプレーでは厳しいマークの中レシーバーが見つからず、時間を掛けているうちにDL#4平川選手がマイナス6ヤードのQBサック。これで焦ったのか、次のプレーでもパスが浮いたところを、DB#16三宅選手がこの試合2回目のインターセプト。敵陣奥でのプレーだったので、そのままエンドゾーンに向かいますが、相手に押し出されてゴール前2ヤードから日本の攻撃が始まります。ここから若いRB#29李選手が1プレーで飛び込み、TDを奪います。

これで事実上試合は決まりましたが、最後に一矢報いたいメキシコは、残り時間の少ない中エンドゾーンを狙うパスを集めてきます。しかしこのシリーズでも、DL#4平川選手の厳しいプレッシャーから逃げながら投じたパスを、今度はLB#5塚田選手がインターセプト。試合時間は1分18秒残っていましたが、日本は無理をせずにQB#8高田選手がニーダウンで時間を消費します。メキシコも、まだタイムアウトが2つ残っていましたがそれを取ることもせず、2回のニーダウンで時間が流れて、試合終了となりました。

再戦まであと三日

ビデオ(ストリーミング)観戦ではありましたが、先にアメリカ戦と比べるとオフェンス・ディフェンスともに格段に良くはなっていますが、正直なところまだまだアメリカに勝つためには足りない部分は多くあると感じられます。オフェンスに関して言えば、ランプレーでもう少し頑張らないと得点力アップは厳しいでしょう。この試合でも、ランプレーが出ていたと言う印象は、後で思い返すと余り記憶にありません。髙木選手等はマークされていたのか、しっかり止められていた場面もあり、更なる改善が必要と感じられました。

ディフェンスに関しても、やはりランプレー対策が必要ではと感じすま。実際試合のスタッツを見ると、日本がラン86ヤード、パス223ヤードに対して、メキシコはラン133ヤード、パス195ヤードとなっており、「止めていた」という印象は余り強くありません。前回同様、1列目(DL)、2列目(LB)で止められず、3列目(DB)でやっと押さえたというプレーが幾つかありました。アメリカのRBは、さらに厳しい走りをするだけに、短い時間の中での更なる対策が必要と感じられます。

短い時間の中で解決しなければならない課題はまだまだ多く残っているようですが、それでも試合に勝ったことも事実。それも、日本チームとして良いプレーもありましたし、後半は色々な選手を経験させるチャンスもあったように見られます。正直なところ、力とサイズではアメリカには勝てないものの、システムとしての緻密さ精巧さでは日本の練度の方が高いでしょう。最後は、気持ちの問題、精神力の戦いになるような気がした、この試合でした。
頑張れ、日本!

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