あるOBの呟き(番外編) - 第5回IFAFシニア世界選手権観戦記(3)
2015/07/17
オハイオ州カントン市で開催中の、第五回IFAFシニア世界選手権大会。初戦の米国戦には破れたものの、続くメキシコ戦にはほぼ満点の内容で勝利し、再び決勝戦で米国と対戦する権利を得た日本チーム。二日後に控えた決勝戦の行方も気になるところですが、やはり「この地」に来た以上、もう一つ気になるものが、ここには存在します。それが、今回の試合会場となっている「Tom Benson Hall of Fame Stadium(Fawcett Stadiumから2014年に改称)」にも示されている「プロフットボールの殿堂("Pro Football Hall of Fame, 以下HOF)」です。日本では一般的に「フットボールの殿堂」と称されますが、正確には現在のNFLに至る、これまでのプロフェッショナルフットボールの功績者を記念する施設です。
高速道路(I-77)を降りて直ぐのところに位置するHOFは、正直なところ予想よりもこぢんまりとした施設ですが、フットボールに多少なりとも関心があり、さらにNFLに贔屓チームを持つ人間であれば、必ず訪れて損の無い場所と言えます。内容に関しての詳細は省きますが、ここカントン市にこのHOFが建設される理由の一つとなった1920年代のプロフェッショナルフットボール黎明期の記録に始まり、最新の2015年殿堂入り選手・コーチの展示まで100年弱の歴史が凝縮されています。
実は今回このHOFを訪問した個人的理由があります。私がNFLというか「アメリカンフットボール」に初めて接したのが、1970年の初め、日本で深夜の放送枠でNFLの録画中継が始まった頃でした。当時中学生であった自分は、意味は分からないけれど何か「格好いい」スポーツに憧れ、そしてこの頃NFLで無敵のチームがMiami Dolphinsでした。この頃フットボールに感化された人にMiamiファンが多いのは、兎に角強いDolphinsを見てきたからという説がありますが、それはあながち外れでは無いと思います。実際Miamiはこの1972年シーズンに、NFL唯一となる、レギュラーシーズン、プレイオフ、スーパーボウルと、負け無し引き分け無しの"Perfect Season"と呼ばれる17連勝でシーズンを終了した頃でした。この頃のMiamiで印象的だったのが、 QBボブ・グリーシー(Bob Griese)と、RBでは「芝刈り機ゾンカ」と呼ばれたラリー・ゾンカ(Larry Csonka)の二人。特にゾンカの走りは、相手をはね飛ばしながら進む重戦車のようなプレーで、後にRBとしてプレーする自分の憧れでもありました。今では微かな記憶でしか無いその当時の思い出を是非一度確かめてみたいと長い間思っていましたが、奇しくも今回それが叶うことになります。実際HOFの中でも、一つのコーナーとしてMiamiのPerfect Seasonは取り上げられており、それだけで十分満足できる内容でした。
展示を観覧中もう一つ目にとまったのが、この「Single Wing Formation」の説明パネルです。今風に言えば、リードブロッカーを極端に集めたワイルドキャット体系とでも言うのかもしれませんが、ランプレーを強化した体型の一つであることは確かです。この体型からヒントを受けて作られたのが、1980年代から2000年に掛けて無敵を誇った日本大学フェニックスの「ショットガン隊形」であったと朧気ながら記憶しています。浅学のため間違いであればお詫びしますが、Single Wing Formationのスナップを受けるバックスをQBにし、リードブロッカー役のバックスまでレシーバーとしてフィールドに出すことで、パスに特化しオフェンス力を徹底的に高めた隊形だと、当時のフットボール紙に掲載された故篠竹監督のインタビュー記事で、この逆転の発想を楽しそうに説明されていたものがあったと記憶しています。後にNFLのチームでも"Shotgun Formation"と呼んで採用するまでになった、ある意味「日本初、米国へ逆輸入されたジャパニーズフットボール」と言っても良いのでは無いかと感じました。
HOFを訪問して改めて感じたのが、フットボールというのは創造・想像のスポーツであると言う事です。ルールにしても、常により安全性と競技としての魅力向上のために改定されますし、映像技術や放送システム等フットボールから生まれたものが沢山あります。そして、各チームは毎年様々なプレー・フォーメーションを生みだし、改善し、場合によっては折角作ったものを捨ててでもより良いプレーを導入し、勝利を目指して前進します。NFLの強みは、「創造・想像」しただけでは終わらず、それを実際に試合の中で検証をしてさらに昇華させることを止めないことです。日本のフットボールにとって今回の大会は、まさに自分達のアイデアを検証し、次のステップに成長する絶好の機会ではないかと感じます。そこから、日本人初のNFLプレーヤーが生まれるチャンスも出来るだろうし、さらにはジャパニーズフットボールがNFLのプレーブックに採用される時も来るのかもしれません。日本チームの頑張りと共に、NFLの常に前進することを止めない姿勢を感じ、また新しい夢をもらったような気分になるとともに、決勝戦のアメリカ戦では、日本の創造力溢れるプレーを是非見せて欲しいと強く願いつつ、この「フットボールの殿堂」を後にしました。
頑張れ、日本!
高速道路(I-77)を降りて直ぐのところに位置するHOFは、正直なところ予想よりもこぢんまりとした施設ですが、フットボールに多少なりとも関心があり、さらにNFLに贔屓チームを持つ人間であれば、必ず訪れて損の無い場所と言えます。内容に関しての詳細は省きますが、ここカントン市にこのHOFが建設される理由の一つとなった1920年代のプロフェッショナルフットボール黎明期の記録に始まり、最新の2015年殿堂入り選手・コーチの展示まで100年弱の歴史が凝縮されています。
実は今回このHOFを訪問した個人的理由があります。私がNFLというか「アメリカンフットボール」に初めて接したのが、1970年の初め、日本で深夜の放送枠でNFLの録画中継が始まった頃でした。当時中学生であった自分は、意味は分からないけれど何か「格好いい」スポーツに憧れ、そしてこの頃NFLで無敵のチームがMiami Dolphinsでした。この頃フットボールに感化された人にMiamiファンが多いのは、兎に角強いDolphinsを見てきたからという説がありますが、それはあながち外れでは無いと思います。実際Miamiはこの1972年シーズンに、NFL唯一となる、レギュラーシーズン、プレイオフ、スーパーボウルと、負け無し引き分け無しの"Perfect Season"と呼ばれる17連勝でシーズンを終了した頃でした。この頃のMiamiで印象的だったのが、 QBボブ・グリーシー(Bob Griese)と、RBでは「芝刈り機ゾンカ」と呼ばれたラリー・ゾンカ(Larry Csonka)の二人。特にゾンカの走りは、相手をはね飛ばしながら進む重戦車のようなプレーで、後にRBとしてプレーする自分の憧れでもありました。今では微かな記憶でしか無いその当時の思い出を是非一度確かめてみたいと長い間思っていましたが、奇しくも今回それが叶うことになります。実際HOFの中でも、一つのコーナーとしてMiamiのPerfect Seasonは取り上げられており、それだけで十分満足できる内容でした。
展示を観覧中もう一つ目にとまったのが、この「Single Wing Formation」の説明パネルです。今風に言えば、リードブロッカーを極端に集めたワイルドキャット体系とでも言うのかもしれませんが、ランプレーを強化した体型の一つであることは確かです。この体型からヒントを受けて作られたのが、1980年代から2000年に掛けて無敵を誇った日本大学フェニックスの「ショットガン隊形」であったと朧気ながら記憶しています。浅学のため間違いであればお詫びしますが、Single Wing Formationのスナップを受けるバックスをQBにし、リードブロッカー役のバックスまでレシーバーとしてフィールドに出すことで、パスに特化しオフェンス力を徹底的に高めた隊形だと、当時のフットボール紙に掲載された故篠竹監督のインタビュー記事で、この逆転の発想を楽しそうに説明されていたものがあったと記憶しています。後にNFLのチームでも"Shotgun Formation"と呼んで採用するまでになった、ある意味「日本初、米国へ逆輸入されたジャパニーズフットボール」と言っても良いのでは無いかと感じました。
HOFを訪問して改めて感じたのが、フットボールというのは創造・想像のスポーツであると言う事です。ルールにしても、常により安全性と競技としての魅力向上のために改定されますし、映像技術や放送システム等フットボールから生まれたものが沢山あります。そして、各チームは毎年様々なプレー・フォーメーションを生みだし、改善し、場合によっては折角作ったものを捨ててでもより良いプレーを導入し、勝利を目指して前進します。NFLの強みは、「創造・想像」しただけでは終わらず、それを実際に試合の中で検証をしてさらに昇華させることを止めないことです。日本のフットボールにとって今回の大会は、まさに自分達のアイデアを検証し、次のステップに成長する絶好の機会ではないかと感じます。そこから、日本人初のNFLプレーヤーが生まれるチャンスも出来るだろうし、さらにはジャパニーズフットボールがNFLのプレーブックに採用される時も来るのかもしれません。日本チームの頑張りと共に、NFLの常に前進することを止めない姿勢を感じ、また新しい夢をもらったような気分になるとともに、決勝戦のアメリカ戦では、日本の創造力溢れるプレーを是非見せて欲しいと強く願いつつ、この「フットボールの殿堂」を後にしました。
頑張れ、日本!
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