2023 第五節: 富士通フロンティアーズ戦の見所

2023/10/29

今シーズンも初戦から四連勝を飾り、ディビジョン内順位2位以上が確定したため、ライスボウルトーナメント準々決勝でのホームチーム権が確定したBIG BLUE。しかし最終節の対戦相手は、昨シーズンのライスボウルチャンピオンである富士通フロンティアーズ(以下、富士通)という大一番が残っており、最後まで厳しいリーグ戦が続くことに変わりありません。富士通もここまで四連勝を続けていますが、オフェンス力(総得点)は201点とX1 Super 12チーム中唯一1試合平均50点を超え、ディフェンス力(総失点)は27失点とオービックシーガルズの25失点に僅かに届かないものの、こちらも一試合あたり1TDを許すかどうかと言う強力な守備力を誇っています。オフェンス力では139点でリーグ3位、ディフェンス力では70失点で4位のBIG BLUEがどこまで迫れるか注目されます。

富士通オフェンスを考えた場合、RB#2 Nixon選手を筆頭に強力なRB陣がまず思い浮かびますが、実際の獲得ヤードではやはりパッシングヤードが勝っており、QB#18高木選手を中心としたパッシングチームと言えます。これまでの4試合では、どの試合でもパスの平均獲得ヤードは11ヤード以上と必ずファーストダウン更新が出来る距離を確保しています。それなのにレシーバー陣も豊富に活躍しているため、レシーバーランキングでは17位にWR#85松井選手がやっと登場するという逆転現象も起こっています。富士通ディフェンスも、4試合で許したTDは2本だけという堅守を誇ります。パスでは平均10ヤード以上の前進を許している試合も有りながらも失点に繋がらないのは、ランディフェンスでは4試合平均で1回2.3ヤードに押さえている底力が、ダウン更新の難しさを表していると言えます。この壁をBIG BLUEオフェンスがどの様に攻略するのか注目されます。
 

オフェンスの見所

重量級QBのQB#10 Viramontes選手、確実にゲインを獲得出来るRB#28加藤選手、ルーキーながら存在感を増しているWR#81糸川選手と、今シーズンのBIG BLUEオフェンスは例年以上にタレントが揃っており、プレー内容も昨年とはひと味違う「濃さ」を感じます。一方で得点は初戦の46点から、35点、31点、27点と減ってきており不安も感じられます。初戦/二戦目では最初の攻撃シリーズでTDを奪っていますが、三戦/四戦目では2Qに入ってからやっとTDを獲得しています。1試合当たり、少ない場合には8回程度の攻撃シリーズしかプレーできない場合もありますから、いかに最初のシリーズから得点に結びつけて行くかが重要になります。プレッシャーの掛かる場面も増える事が予想されますが、K#11福岡(勇)選手のキックがこれまで以上に重要な試合になるでしょう。

前節の胎内ディアーズ戦(以下、胎内)のオフェンスでは、試合中一貫してパスに拘った内容となりましたが、残念ながら4Qに同点に追いつくWR#86熊井選手へのTDパスが成功するまで、期待通り機能したとは言えない内容でした。この試合では、さらに厳しいQBへのプレッシャーや、レシーバー陣へのディフェンスバック(DB)のマークも一層厳しくなることが予想されるため、試合までにどれだけ準備出来るかが重要となります。TE#40 Stanton選手、WR#84近江選手、WR#85鈴木(隆)選手と言ったホットラインは勿論、ルーキーのWR#81糸川選手や春から存在感を増しているWR#86熊井選手といった若手の活躍で、どれだけ活路を開くかが注目されます。

そして、この試合でもRB#28加藤選手のランプレーには注目です。CFLを目指す能力の高さもありますが、今シーズンのオフェンスプレーを見ていると、オフェンスライン(OL)がしっかりと前に出てブロックをして走路を確保し、レシーバー陣のリードブロックも機能している様子を何度も見ることが出来ます。このコンビネーションを、この試合でも相手に臆すること無く確実に実行できるかがこの試合の見所でもあるし、さらにその先にあるトーナメントを勝ち抜くための原動力にもなります。RB#28加藤選手やRB#4鈴木(恵)選手らRB陣のランに、QBのQB#10 Viramontes選手のスクランブルもあり、ランオフェンスが機能してディフェンスが前に上がってくれば、あいたスペースへのパスオフェンスの期待も生まれてきます。前節の胎内戦では、QB#2政本選手からWR#80小鳥居選手へのフリーフリッカーで試合を決定づけましたが、意表を突くプレーコールをタイミングよくどの様に繰り出すか、クラフトヘッドコーチの采配も見所になります。
 

ディフェンスの見所

パスオフェンスが中心と予想される富士通ですが、やはりRB#2 Nixson選手、RB#21三宅選手ら強力なRB陣への対応は必須です。胎内戦では、32回/166ヤードと、それまでの3試合分を大きく超えるラッシングヤードを許してしまったBIG BLUEディフェンスとしては、もう一度ゲームプランの確認と修正が必要になるでしょう。ただディフェンスにおいても、昨シーズンと比べてディフェンスライン(DL)とラインバッカー(LB)の連携は成長していると感じられ、その証拠としてLB#17茂木選手、LB#45酒井選手、LB#52山本選手、LB#57寺林選手らLB陣の好プレーを何度も試合中見ることが出来ます。胎内戦ではRB#24川村選手一人で96ヤードの前進を許しましたが、RB#2 Nixson選手に対して同じ轍を踏まないことが最大のテーマになります。

パスディフェンスでは、リーグでもトップクラスのOL陣を有する富士通だけに、これまでのようなQBへのプレッシャーは難しいと言えます。力で押しきるのではなく、DL同士、あるいはDLとLBとのコンビネーションで相手のタイミングを崩してQBに迫るテクニックの勝負になるでしょう。ここでは、1年前までコロラド州立大学の現役選手としてプレーをしており、試合感もまだ十分に残っていると期待されるDL#6 Onyechi選手のプレーに注目です。彼に注意が集まれば、反対側に位置するDL#99島野選手やDL#31菊池選手のプレーにも余裕が生まれ、QBに対してより強力なプレッシャーが期待出来ます。今シーズンは登録メンバーも多く、ローテーションにも余裕があるDL陣LB陣の最前列での鬩ぎ合いは、これまで以上の見所になるはずです。

富士通のパスオフェンスでは、QB#18高木選手から奥へ走り込んでくるターゲットへのパスが多くなると予想され、DB陣はこれまで以上に厳しいマッチアップが予想されます。BIG BLUE以上に豊富なレシーバー陣を擁するだけに、どのレシーバーがどこに走り込んでくるか絞ることも難しいのですが、3試合目となり試合感も取り戻しつつあると感じるDB#37 Stewart選手のプレーには、この試合も見逃せません。胎内戦での98ヤードインターセプトリターンTD(Pick 6)は試合を決定づける大きなプレーでしたが、DB#24岸野選手、DB#29米田選手ら若手とのコンビネーションが見所になります。さらに、DB#1中谷選手、DB#5小阪田選手らベテラン勢も、インターセプトやブリッツでミドルゾーンのディフェンスの厚みを増しており、ここ数シーズンでは最も充実していると言えるディフェンス陣がどこまでその力を発揮できるか注目されます。
 

試合の見所

今シーズンもライスボウルで勝利し三連覇を目指す富士通は、X1 Super 12チームでもトップの実力のチームと言えるでしょう。その富士通に勝てるチームは、富士通しか無いと言っても良いほど現時点で充実した戦力を要しています。BIG BLUEに取っては、対戦経験のあるX1 Super所属チームのうち唯一勝ち星の無いチームだけに、2シーズン振りとなるこの試合でも初勝利が最大の目標になります。ただし、2016年のJXBトーナメント戦で最も肉薄して以来、以降の対戦は力の差が広がるばかりです。その2016年の対戦は、4Q最後に富士通のサヨナラ45ヤードFGが成功し26-28で敗れますが、その得点内訳は、BIG BLUEが3TD/1FG/1SFに対して、富士通は2TD/5FGとTD数ではBIG BLUEが上回っています。BIG BLUEも3回のFG機会のうち2回失敗しているため、もしそのうちの1本でも成功していれば、最後に逃げ切れた可能性もありました。この試合でも、どれだけ得点機会に近づき貪欲に得点を勝ち取りに行くか、まずはその気持ちの勝負になるでしょう。

挑戦者となるBIG BLUEとしては、まずはここまで多く発生している反則を無くして相手にチャンスを与えないことが大前提となります。また、ファンブルリカバーやパスインターセプト等相手からターンオーバーを奪ってはいるものの、BIG BLUE側も同様に相手にターンオーバーのチャンスを与えた場面も少なくありません。また大事には至らなかったものの、パントやキックオフリターンではボールの確保が危うい場面もあり、結果的に試合には勝利しているとはいえ、この手のミスは決定的な失点に繋がります。残る準備時間の中で、どれだけ一人一人のプレーの精度を上げていき、さらにチームとしての完成度を高められるかが最大の目標になるでしょう。厳しい言い方をすれば、昨シーズンは第四節までは上り調子であったものの、第五節からは下降線を下るばかりのシーズンでした。今シーズンも同じ道を繰り返すのか、それとも昨シーズンの経験を糧として成長したチームを見せることが出来るのか、この先に控えているライスボウルトーナメントで勝ち抜くためにも重要な布石になるでしょう。これまでに見たことの無い、ひと味もふた味も違うBIG BLUEの試合を是非見せて欲しいと思います。

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