2023 準決勝: パナソニックインパルス戦の見所
2023/12/03
苦しみながらもライスボウルトーナメント(以下、RBT)準々決勝・ノジマ相模原ライズ戦(以下、ノジマ相模原)を、K#11福岡(勇)選手の56ヤードFGで劇的勝利を掴んだBIG BLUE。続く準決勝の対戦相手は、昨シーズンのリーグ戦以来の対戦となる、パナソニックインパルス(以下、パナソニック)です。安定した戦力を誇るパナソニックは、今シーズンもリーグ戦を順調に勝ち抜き、第五節オービックシーガルズ(以下、オービック)との対戦でもディフェンス戦を制して逃げ切り、Division-Aを無敗の1位で終了しました。RBT準々決勝ではアサヒビールシルバースター(以下、アサヒビール)と対戦。リーグ戦から更に調子を上げたオフェンス、ディフェンス共に強さを見せて、34-0と完封勝利で勝ち上がります。BIG BLUEとの昨年の対戦も14-45と完敗の内容でしたが、その前年のJapan X Bowlトーナメントセミファイナルでは、31-38と最後に逆転を許し僅差で敗退。今回の試合では5年振りの勝利を目指します。
オフェンスでは、QB#12荒木選手に加えて、QB#8石内選手の活躍も今シーズンは際立ち、BIG BLUEとはスタイルは異なるものの、2人QBの体制が十分に機能していると言えます。パスオフェンスでは、豊富なレシーバー陣が揃いますが、特に新加入した長身のTE#80 Raymond選手への高さを生かしたパスが印象的で、DB陣のマッチアップではDB#37 Stewart選手との対決が注目されます。ランオフェンスでは、エースRBのRB#5ビクタージャモー選手とRB#42立川選手がパワフルなランプレーを見せており、DL/LBの早い集まりが鍵になります。ディフェンスもフロントのDLにはオールジャパンクラスの選手が揃っており、BIG BLUE OLは厳しい対決が予想されます。先ずは今シーズン好調な、RB#28加藤選手、RB#21平松選手のランプレーをどれだけ出せるかが鍵となり、そこにWR#81糸川選手らレシーバー陣への正確なパスがどれだけ通せるかが、試合を左右するでしょう。
オフェンスの見所
リーグ戦では、試合毎に得点が減っていく厳しい状況でしたが、ノジマ相模原戦では相手にリードを許し苦しい展開ながらも、後半2TDと最後の1FGを決め、少し持ち直した様子が伺えます。とはいえ、先制点を許し、かつ先行される試合展開は、更に強いディフェンスを持つパナソニック相手では不利になることは言うまでもありません。今シーズンの試合を見て、BIG BLUEの2人QB対策も準備してくることは確実ですから、それも含めてどれだけ対応しつつ相手の隙を突けるか、これまでの経験も生かしたゲームプランが見所になるでしょう。特にQB#10 Viramontes選手は、ここまでの試合でプレースタイルを模索している様子が伺え、その結果がこの試合で結実すれば、勝利を手繰り寄せる大きな武器になることは間違いありません。体のサイズを生かしたQBキープが注目されますが、強いスナップで投げ込むパスも魅力であり、小技のきいたプレーが見所になるでしょう。
ランオフェンスでは、初戦での怪我から復帰したRB#21平松選手が前節のノジマ相模原戦で活躍し、ランオフェンスの大きな柱が一つ増えました。学生時代を彷彿させるパワフルな走りが戻ってきており、この試合での活躍が期待されます。さらにRB#28加藤選手の突破力が加われば、ランオフェンスはかなり期待出来ます。ただし、リーグ屈指のDL陣を突破することは容易ではなく、スクリメージラインを越えるホール(隙間)は狭く一瞬です。RBとOLがどれだけタイミングを合わせられるかが鍵になります。またQB#10 Viramontes選手のランプレーも、ノジマ相模原戦では早いラッシュで止められる場面が何度かありました。ディフェンスが強力な相手だけに、更に厳しい状況になることは確実で、QB#10 Viramontes選手のQBとしての資質が試される試合になるでしょう。
勝敗を握るのは、やはりWR陣の活躍にかかります。Xリーグの試合にも慣れてきたWR#81糸川選手が、この試合でもキーマンの一人と言えます。スピードだけで無く、激しいタックルを受けても当たり負けせず、WR#84近江選手の素早さと、TE#40 Stanton選手のパワフルさを兼ね備えた選手と言えます。またベテランのWR#85鈴木(隆)選手も調子の良さを見せており、パスターゲットには不足しないと言えます。気になるのは、やはりQBとのタイミングで、どの試合でも微妙に奥で有ったり手前であったりと、やや呼吸の合わないプレーが散見されます。パナソニックDB陣もスピードのある選手が揃っているだけに、一瞬のタイミングを逃さずどれだけ投げ込めるか、二人のQBとレシーバー陣の集中力が試される試合になると言えるでしょう。それは早いタイミングパスだけでなく、プレーが崩れた時にどれだけフリーになれるかも含めて、オフェンス力が試される試合になります。
ディフェンスの見所
ディフェンスのこの試合最大のテーマは、RB#5ビクタージャモー選手とRB#42立川選手をいかに止めるかであると言っても過言では無いでしょう。どちらかと言えばランオフェンスが中心となるパナソニックオフェンスの、さらにラッシングヤードの8割近くをこの二人で獲得するだけに、この二人を止めることが出来れば勝利は確実と言っても過言では無いでしょう。とはいえ、それが簡単では無い事はこれまでの試合が証明をしています。RB#5ビクタージャモー選手は、上手くタックルをすり抜けるしなやかな走りが特徴。一方のRB#42立川選手は体格を利用した重戦車のような突破力があり、どちらもファーストタックルで止めることは難しく、ディフェンスの集まりが勝負所になります。ノジマ相模原の4thダウンパントギャンブルを阻止したLB#57寺林選手のプレーのように、特にLB陣の機動力が試される試合になるでしょう。
パスディフェンでは、WR#2 Fields選手、TE#80 Raymond選手の二人の新加入外国籍選手対策がまずは重要。リーグ戦最終戦のオービック戦では、この二人でパッシングヤードの95%を獲得しており、この二人へのパスディフェンスは大きな見所になるでしょう。最後尾を守るDB#37 Stewart選手とのマッチアップが注目ですが、奥へ走るWR#2 Fields選手に対応してしまうと、その空いたスペースへTE#80 Raymond選手が入りパスを受けるとTDまで持ち込むというプレーもあり、これまで以上に厳しいパスディフェンスが予想されます。勿論、WR#14ブレナン選手、WR#88木戸選手といった日本人レシーバー陣も実力があり侮れません。ここまでの試合では、DB#24岸野選手、DB#33藤田選手が良いパスディフェンスを見せており、この試合でも注目されます。さらに、パスインターセプトでトップに並ぶDB#5小阪田選手のビッグプレーを、この試合でも期待したいところです。
まだまだ完成されたとは言えないBIG BLUEディフェンスですが、ここ数シーズンの中では「安心感」が感じられるユニットに成長しています。DL#99島野選手、DL#92草野選手、DL#31菊池選手、DL#6 Onyechi選手と、両外を固められる選手がおり、その間をDL陣とLB陣が厚く守ることで、ランディフェンスに強くなったことが一つ。さらに外からのラッシュでQBへプレッシャーを掛けることがこれまで以上に効果的で、結果的にパスディフェンスにも貢献しています。ただパナソニックQB#12荒木選手は走力もあり、オービック戦ではチーム2番目のラッシングヤードを獲得しており、油断できません。また先日発表された全日本選抜第一次選抜候補選手には、パナソニックからは19名が選出されていますが、QB#12高木選手を筆頭に12名がオフェンスの選手です。全日本クラスの強力なオフェンスに対してどの様なディフェンスが展開出来るか、大きな見所になります。
試合の見所
この試合から1Q=15分の試合となり、これまでの1Q=12分の感覚で言えば、丸々1Q増えた計算になります。パナソニックは、昨年もセミファイル、ライスボウルとこの15分計時の試合を経験しており、慣れている選手も多いと思いますが、BIG BLUEは2年前のパナソニックとのセミファイナル以来の経験となるため、半分近い選手に取っては15分計時に馴染みが無いかもしれません。選手交代が自由なスポーツですから、必要に応じて選手が入れ替わり常にフレッシュな状態でプレーできるとは言え、やはり効率的にローテーションを組まないと後半でのパフォーマンス低下に繋がります。チームとして、ベンチワークが試される試合にもなります。そう言う意味では、文字通り総力戦と言える試合になるでしょう。
リーグ戦も含めると、今シーズン3回目の遠征試合。ここまでのシーズン7試合で3回の遠征試合は、体力的には問題無くても精神的には見えない負担を感じるかもしれません。とは言っても、遠征試合におけるBIG BLUEの勝率はそんなに悪くは無く18戦11勝6敗1分、勝率的には全体の勝率(78勝60敗3分)を1割近く上まわります。対パナソニック戦でも、セミファイルでは全て遠征試合で対戦していますが、今の所2勝2敗の五分。しかも、いずれの試合も1TD差以内での僅差での接戦となっており、今回の試合も最後までもつれる展開が予想されます。実力的には、ここ数シーズン常にトップを争うパナソニックに分があることは間違いありませんが、今シーズンのBIG BLUEは、これまでとは異なる「何か」が感じられる試合をしてきており、期待できます。富士通戦での大敗は大きな教訓ですが、同じく強力な相手に対して今度は自分達がここまで積み上げてきたものをしっかりと見せて結果を出す事が出来るか、正念場の試合になります。
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